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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)3584号 判決 1969年8月30日

原告 東和交易株式会社

右代表者代表取締役 川上弘

右訴訟代理人弁護士 西林経博

原告 株式会社須之内商店

右代表者代表取締役 高須賀悦一

右訴訟代理人弁護士 大森清治

被告 北村正章

主文

①債権者被告ほか五名債務者昭和実業株式会社間の東京地方裁判所昭和四四年(リ)第四二号配当事件につき同年三月六日作成された配当表のうち被告の債権金五〇〇万円に対し金二〇万四七六五円の配当額を定めた部分はこれを取消す。

②東京地方裁判所に対し右二〇万四七六五円につき新たな配当表を作成することを命ずる。

③訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告東和交易株式会社訴訟代理人は主文第一、二項同旨の判決を求め、請求の原因として、

「主文第一項掲記の配当事件につき昭和四四年三月六日別紙のとおりの配当表が作成され、同年四月一日の配当期日に原告東和交易株式会社は出頭して被告の債権は訴外昭和実業株式会社と通謀してなされた虚偽の債権であるので存在しない旨を主張して異議を申立てた。

よって被告に対する配当額を取消し、前記配当表の更正を求める。」

と述べた。

原告株式会社須之内商店訴訟代理人は「①東京地方裁判所昭和四四年(リ)第四二号配当事件につき、同裁判所の作成した配当表の被告の部分を取消し、さらに原告株式会社須之内商店の債権額につき被告の配当額金二〇万四七六五円を配当する。②訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、請求の原因として、

「一、被告は、東京地方裁判所昭和四三年(ル)第四、八六二号をもって訴外昭和実業株式会社を債務者、同株式会社大和銀行を第三債務者として債権差押及び取立命令の強制執行をした。

二、訴外昭和実業株式会社の債権者である原告株式会社須之内商店は、右差押債権に対し配当要求の申立をしたが、債権者間における協議が調わないため第三債務者である訴外株式会社大和銀行は、右被差押債権金一〇〇万円を供託し、これが事情届を同裁判所に届出て目下同裁判所において昭和四四年(リ)第四二号配当事件として係属中である。

三、しかるに被告は、右配当事件につき訴外昭和実業株式会社に対し金五〇〇万円の貸金債権が存在すると申立てたので同裁判所はこれを認め、被告の債権額に相当する金二〇万四七六五円を配当すべき配当表を作成した。

四、しかし被告の訴外昭和実業株式会社に対する前記債権は存在しないので、原告株式会社須之内商店は該配当表に対し異議の申立をなしたが、被告は異議を正当であるとしないので本訴に及んだ次第である。」と述べた。

被告は請求棄却の判決を求めた。

理由

被告は原告らの主張する請求原因事実を明らかに争わないからすべて自白したものと看做す。従って本件配当事件において被告の貸金債権金五〇〇万円は存在しないのであるから、本件配当表のうち被告の右債権に対する金二〇万四七六五円の配当を定めた部分はこれを取消すべく、右金額に関する新たなる配当表は、本異議事件以外の事情をも参酌して配当裁判所が作成することが相当であるので、民事訴訟法第六三六条後段にしたがい、東京地方裁判所に対し新たなる配当表の作成を命ずることとする。

原告株式会社須之内商店は取消された配当額の全部を同原告に対し配当することを求めているが、配当異議事件の原告は適正な配当をなすべきことを申立て得るにとどまると解せられるから、右申立が容認せられる以上主文第二項を超える部分について請求棄却をする必要はない。

よって訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 石川義夫)

<以下省略>

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